チャリをこいで、少したった所で大きな道路に出た。
信号が赤で俺たちは、一回こぐのを止めた。
もう、時間は9時を過ぎている。
駅前の道路は、賑やかな光をたくさん発していた。
『あ、あれ…』
優吾が道路の向こう側を見ながら、声を出した。
『どした?』
『篤にぃだ』
優吾の視線をたどると、明るい茶髪で短髪の男が女の肩に腕を回して歩いていた。
『誰だよ…、あの茶髪』
『桂木篤人(カツラギアツト)。 里衣の兄ちゃん。
いや、“元(モト)”って言った方が正しいかもな』
里衣の兄貴…
前に、里衣から話を聞いた。
里衣が初めての恋をした相手。
たくさん傷ついて、失った恋の相手。
今、初めて見た。

