記憶の片隅に





『俺、知らなかったんだ。

この前、里衣が話してくれた』





『何をだよ』





『里衣が… 凌央の記憶だけ失ったこと』





『聞いたのか』





『あぁ。

俺、ずっと勘違いしてた。

小さい時から、ずっと里衣と一緒にいて里衣のこと一番分かってやれるって思ってた。


けど、里衣が暗闇に陥った時に明るい世界に連れ戻したのは凌央だった。


凌央と出会ってから、どんどん変わってく里衣に気づいてた。


それが俺にとっては悔しかった。

でも、その反面、安心もしてたんだよな。

無理に笑ってた里衣は辛そうで、痛そうで、

でも、凌央といる時の里衣は幸せそうに笑ってた。


里衣が幸せなら、それでいいって思えたんだよ。


たとえ、その隣に俺がいなくてもいいって思った。