優吾があたしの体をそっと離した。
『…里衣は、凌央のこと忘れても、あいつのこと好きなのか?』
『…好き。
初めは、よく分からなかった。
けど、あたしに向けられてた優しさとか、想いに気付いて……
今さら、遅いのにね』
『そっか』
優吾は呟くように言うと、下を向きながら、付け加えるように
『送ってく』
と言った。
あたしは
『ありがと』
とだけ返して、優吾の家を出た。
あたしの家まで、徒歩10分くらい。
その間、あたしたちは
『じゃぁ、またね』
としか会話をしなかった。
自転車置き場に、あたしのチャリが返されていた。
それは、きっと優吾が運んでくれたんだと思い、何だか申し訳なく思った。

