『そう』




『けど、里衣は分かるだろ!?

自分のコトも、俺たちのことも!!』





『分かるよ、はっきり覚えてる。


だって、あたしが忘れたのは…

“凌央のコト”だけだから』





優吾が息をのむのが分かった。




『…“凌央のコト”?』




異国の言葉をしゃべってるみたいに、片言で優吾が言った。




『凌央っていう人間自体も、

凌央との出会いも、想い出も、


あたしの頭から、凌央だけぬけてるの。



凌央のこと、いっぱい傷付けた。


だから、正しい。

今のあたしたちは、これで間違ってない』





『ぢゃぁ、何で。

何で、そんなに…


悲しい顔してんだよ…』





“してないよ”




そう言おうとしたけど、声にはならなかった。