記憶の片隅に





涙が止まるまで、はるくんは背中をさすり続けてくれた。





『里衣』




『ん?』




顔をあげて、はるくんを見た。




『忘れんなよ。

俺は、ずっと味方だから』





『ありがと』




本気で口から出た言葉だった。




『いぃんだよ。

里衣は凌央の大切な人だから。


俺にとっても大切なの』




あたしは、凌央の大切な人?



それは、ちょっと違う。




『はるくん、違うよ。

あたしは、凌央の“大切だった人”だよ』




真面目な顔で言うと、はるくんも真面目な顔になった。




あたしの頭に手をおいて


『…そんなこと、無理して言わなくていい』


と言った。





ただ、事実を言っただけ。



だけど、その事実はあたしの心に深く深く突き刺さる。




そして、あたしの心は痛みを覚えた。