記憶の片隅に





二人のこと、一番知ってたはずなのに…



こんな大事な時に、あたしは何もできない。




そのまま、しゃがみこんで声を出して泣いた。




ふと、隣に誰かが座る気配がした。



涙でグシャグシャの顔で、左を見ると遥斗がいた。






『落ち着いた??』




自分の服の袖口で、あたしの涙を拭いてくれた。





『もどかしいよな。

親友の為に、何もしてやれねぇ。


俺も梨花子とおんなじ』





『遥斗も?』





『うん。
俺は医者じゃねぇから里衣の記憶は直せないし、力にもなれない。

親友が毎日落ち込んでいくの、ただ見てることしかできない。


あの二人のこと、ずっと見てきただろ?

だから、何かこっちが寂しい』






『…うん。

今は、見守るしかないのかな』





あたしが言うと、遥斗は頷いた。



『そぅだな!

あの二人なら平気だろ』





遥斗の笑顔にやけに安心した。