記憶の片隅に





−梨花子side−




あたしにとって、二人は憧れだった。




自分の大切な物の一つだったようにも思う。





里衣が幸せそうに笑う。



隣には、中島の存在がいつもあった。





事故で、記憶を失ってからの里衣はきっと、たくさん戸惑った。




でも、あたしからは何も言えなくて


ただ、二人を見守ることしか出来なかった。




いつも、里衣のお見舞いから帰ってくるたびに、無力な自分に腹がたって一人で泣いてた。




里衣の前では泣けない。



だって、一番辛いのはあたしなんかじゃない。




大切な人を忘れた里衣


大切な人に忘れられた凌央




それぞれ、きっと暗闇をさ迷って、辛かった。





あたしは、ただ里衣のお見舞いに行くことしかできなかった。