記憶の片隅に





『…ごめんなさい。まだ…何も分からなくて…』





『いぃよ。無理には思い出さない方がいい』





『名前…聞いてもいい?』





“名前…聞いてもいい?”




そういえば、里衣と初めて話した時も里衣は俺にそう言った。





『中島凌央。里衣は凌央って呼んでた』





『…凌央……。それなら、凌央って呼んでもいいかな…?』





『今更聞くことじゃないだろ』





里衣の笑顔は何も変わらない。



里衣の声も何も変わらない。




それでも…



俺たちの関係はリセットされていた。




俺の気持ちは里衣にあって…


今も

目の前にいる里衣が愛しくてたまらない。



そんな思いも今は一方通行の片想いなんだ。




ただ、一緒にいれればいいなんて思ってた。




けど、気持ちが通わないコトは


こんなにも切なくて


哀しくて


残酷だ。




記憶から消された俺は…



君の為に何ができるんだろうか…?