「ミキちゃん。今、オイラのことオウタって呼んだか?」
「うん。おばあちゃんがいっていたの。ここのサラクのかみさまは、オータっていうなまえなのよって」
「ミキちゃんのおばあちゃん?」
「おばあちゃんがつけたんでしょ。オータって名前」

おばあちゃんが言ってたよ。
にこにこと笑いなが言うその顔を見て、やっと、この子が誰に似ていたのかオイラは判った。
小さいころのカヨちゃんに、どこか似ていたのだ。

「カヨちゃんの孫かあ」

びっくりした顔のオイラを見て、ミキちゃんはコクコクと嬉しそうに頷いた。

「おばあちゃんがいってたの。ここにサクラのかみさまがいるよって」

本当にいたから驚いたというミキちゃんに、オイラもカヨちゃんにこんな大きな孫いると知って驚いたと、笑って答えた。

「ミキは、おばあちゃんにね、にてるから、みえるかもしれないって、おばあちゃんにいわれたの」
「うん。似てるな。カヨちゃんの子どものころに、よく似てるよ」

うんうんと頷いてあげると、ミキちゃんは嬉しそうに笑った。

「カヨちゃんも、来てるのか?」

会いたいなあというオイラの前で、ミキちゃんは泣きそうな顔になった。

「どうした?」
「おばあちゃん。もう、ずっと、にゅーいんしてるの」
「入院? どっか悪いのか?」

入院がどういうのか。
実は、オイラもよく判っていなかった。
人間は体の具合が悪くなると病院というところに行くのだと、昔、カヨちゃんに教えてもらった。
とても具合が悪いときは、入院するのだと、カヨちゃんは教えてくれた。

「びょうきなの。あんまり、よくないって、パパとママがいってたの」

しょんぼりとするミキちゃんに、オイラはそうかとした言えなかった。

こればかりは仕方がなかった。

人の一生はオイラの一生より、ずっと、短く儚い。
オイラはずっと、それをここで見ているしかできない。



そうか。
カヨちゃんも、そうなのか。



遠いカヨちゃんを想った。