その日から、カヨちゃんは毎日オイラに会いに来てくれた。

晴れの日も。
雨の日も。
雪の日も。
嵐の日だけは、危ないからくるなと、夢の中で言い聞かせた。
カヨちゃんも、すぐにオイラが見えなくなるんだろうなと思っていた。
今までの子たちは、みんなそうだった。
少し寂しかったけど、それでいいとオイラも思っている。
人間は人間と一緒に人間の世界で生きていかなきゃだめだから。
こちら側にはきちゃいけない。

ほんの少しだけ、たまに話しをするくらいがちょうどいい。


けれど、カヨちゃんは長い間、オイラが見えて、オイラと話せた。



それが、楽しくて、楽しくて、楽しくて。
だから、オイラは勘違いしてしまった。
ずっと、その時間は続くのだと。
そんなはずはないのに、そんな勘違いをしてしまった。




でも、そのときはきた。


突然、きた。


いつものように、オイラのところに来たカヨちゃんは、なぜかオイラを必死に探していた。

「桜太っ 桜太っ どこにいるのっ」

出てきてよっ
最初は怒った声で、でも、だんだんと泣き声になってきたカヨちゃんに、オイラはここだと、カヨちゃんの前に立って必死に叫んだけれど、オイラのその声は届かなかった。

「ふざけてないで、出てきてよっ」


悲しいその声に。
やっと。
オイラも悟った。
もう、楽しい時間は終わりにしなきゃならないときがきたのだと。


さよならくらいは、せめて、言いたかったなあ。


カヨちゃんが付けてくれたオイラの名前を、カヨちゃんは必死に呼び続けながら、カヨちゃんは泣き崩れた。


それから間もなく。
カヨちゃんは、学校ってところで先生と呼ばれる人になって。ここには来なくなった。






オイラが見えないと、カヨちゃんが泣いたあの日から。

それでも、オイラは、変わることなく、ここで何十回と花を咲かせている。