カヨちゃんと初めて話しをした日は、守田さんたちが防空壕に逃げてきた、あの怖い夜の次の日だった。

お皿に、団子を乗せてきてくれた。

座って欠伸をしていたオイラを見て、カヨは笑い転げた。

「かみさま、ねむいの?」

いきなりそう声を掛けられて、オイラは面食らった。

「お前、オイラが見えるのか?」
「うん。お父さんが言っていたとおりだった。うら山のサクラの木には、小さなかみさまがすんでいるから、こまったときはたすけてもらうんだよって」

守田さんちのお父さんは、少し前から家にはいなくなった。
戦争に行っているらしい。

そういや、小さいときに話したなと、そんなことを思い出した。
いつも、オイラによじ登って遊ぶ腕白坊主だった。

「あたしは花代」

こういう字だよと、カヨちゃんは地面に字を書いてくれた。

それから、団子をオイラにくれた。
昨日、助けてくれたお礼だよとカヨちゃんは言った。

あとから知ったことだった。
食べ物があまりない時代で、あの団子は、カヨちゃんが食べるはずだったご飯をがまんして、オイラに作ってきてくれたものだったことを。