もしも。
誰か一人でも泣く人がいるのならば。

私はその人の為に生きようと。


どんなに現在が辛くても、生きていようと。


そして、もしも誰もいないのならば。
一人、こっそり息を絶とうと。


他にも聞きたい事はたくさんあった。

例えば、自分は母親の子供ではないんじゃないかだとか。
これから、明るい未来が待っているのかとか。

だけど、全て否定されてしまうのは怖かった。


だから、私の為に涙を流してくれる様な人が一人でもいるならば。


それが、全ての答えの様な気がした。



由香里はぼーっと、鏡の中を見つめる。
すると、そこに何かが確かに写った。


写った何かは、女の様な、男の様な、若い様な、年寄りの様な。

ぼんやりとした姿だった。


由香里はぽつりと思った。


(…これが鏡の中の住人)


驚きも興奮も恐怖もない。
由香里はその事実をありのままに受け入れていた。