(…鏡)


ぐるりと部屋の中を一周見回して、由香里は見つけた。
大きな鏡の存在に。


自分よりもでかい、その鏡。
その荘厳とも言える鏡に、由香里は圧倒されていた。


(…おっきい)


思わず、その鏡に見惚れてしまった。
我に返るのに、少し時間がいった。


鏡に質問しないと。
そう、由香里が思ったのはこの部屋に入ってから五分程経った後だ。




「…鏡の中の住人さん。
いるなら教えてください」


由香里の聞き方は今までの誰とも異なる。
それは、由香里がここの都市伝説とも言える全てを信じていたからだ。

何かはわからないけど、ここに誰かがいるんだって事を信じていた。


それから、由香里は真っ直ぐに鏡に向き合うと続きを口する。



「…私が死んで…誰か。
誰か一人でもいい。…私の為に泣く人はいますか?」