「鏡って、これ?」

その子は一人でその場所へ訪れる。
そこは廃れた洋館だった。
その一番奥の部屋。
そこは真っ暗闇で、ぽつんと鏡だけかけられている。

巷で都市伝説のように語られていたこの場所。


その子は利美という名前だった。
年は十六。高校を中退して働いている。
気が強く、負けず嫌い。
だけど、顔は上の中ぐらいだろう。
性格を差し引いても、魅力のある女性だった。

彼氏はいた。三つ年上。
その彼は器量がよく、職場でもよくモテた。

その利美の聞きたかった事は、その彼の事だ。


噂でこの場所に何でも答えてくれる鏡があるからと聞いて、単独で訪れたのだ。


「うわ、クモの巣」

吃驚して利美は後ずさる。
誰も人が訪れないのだろう。
至るところにクモの巣が張り巡らされていた。

利美は薄暗い廊下を真っ直ぐ歩く。