俺は彼女の名前を聞いたことがない

--瞬間、

俺の唇に柔らかい何かが接触した。



彼女の唇だ。


俺はバッと素早く後ろに身を退いた。


彼女はニコッと微笑む。
よく見ると頬が少し赤くなってるのがわかる。


か、可愛い…。



彼女の唇はとても柔らかくて濡れていた。


今までに味わったことの無い感触。



実は俺達、今までキスをしたことがなくて、
つまりこれがファーストキスということになる。



いや、キスをするには良いシチュエーションだが、すごく恥ずかしくて死んじゃいそう。


自分の唇を人差し指でそっと触る。

彼女の濡れた唇が重なったのでその分俺の唇も濡れている。



「さ、帰ろう蓮君」


彼女は俺の手をとり、出入口まで走っていく。