【完】*運命論*







「梶……さん?」

「にぃ」

「なに? どうしたの?」


止まれ。落ち着け。

音が大きすぎるよ、あたしの心臓。



「にぃ……」


まるで、愛しそうにあたしの名前を呼ぶ。


そして、ゆっくりと顔が近づいてくる。


唇が重なろうとした瞬間、ちょうど……てっぺだった。




だけど、唇は重ならないまま、触れたのは、額だけ。



「ごめん。ごめんな、にぃ。ごめん」

そう、言いながら梶さんはただ額を重ねるだけ。


なんで……謝るの?


そう、聞きたかったけど、


あたしはただ梶さんの服を強く握るしかできなかった。