「梶……さん?」 「にぃ」 「なに? どうしたの?」 止まれ。落ち着け。 音が大きすぎるよ、あたしの心臓。 「にぃ……」 まるで、愛しそうにあたしの名前を呼ぶ。 そして、ゆっくりと顔が近づいてくる。 唇が重なろうとした瞬間、ちょうど……てっぺだった。 だけど、唇は重ならないまま、触れたのは、額だけ。 「ごめん。ごめんな、にぃ。ごめん」 そう、言いながら梶さんはただ額を重ねるだけ。 なんで……謝るの? そう、聞きたかったけど、 あたしはただ梶さんの服を強く握るしかできなかった。