「菜摘さんがいなくなって、すぐに俺のところに来ました。最初は俺のことが心配できてくれたんだと、そう思って俺はそれに、甘えてしまいました。すみません」
「……そう、尚紀くんのところに。いいのよ、謝らないで。好きな人のそばにいたくて、すぐ行動に移すのは、やっぱり姉妹ね」
そういえば、菜摘も俺とつき合ってすぐに家を出たんだっけ……。
「奈南は元気?」
「はい。すごい、俺の背中を押してくれます」
「……奈南の出て行った理由は、わかってるの」
「え……」
「……あたしもお父さんも、菜摘がいなくなってボロボロだったのよ。すごく、すごく大事に育ててきたから。だから、その分奈南に目を向けてあげられなくてね。それで、菜摘がいなくなっても、あたし達は菜摘しか見てなかったから」
「……そうですか」
『いつも……っ、あたしはお姉ちゃんの代わりだった!!』
「尚紀くん、奈南には戻ってこいなんて言わないわ。今更だもの。でもね、一言だけ伝えて。
“たまには顔を店に来てね”って」
少し寂しそうに笑って、おばさんはそう言った。
「はい、必ず伝えます」
俺はその日、泊めてもらうことにした。

