「ぁ、あたしの家ここです」
「……にぃ」
「ぇ?」
「“にぃ”。これから、そう呼んでいい?」
「……は、はいっ!!」
「それと敬語禁止」
「え?」
「連絡先、教えて欲しいんだけど」
そうニッと笑ってケータイを見せる梶さん。
そんな姿にも、胸が高鳴るんだ。
あたしはすぐにケータイを取り出して、赤外線でアドレスとケー番を交換した。
「んじゃ、また連絡するよ」
「う、うんっ!!」
「おやすみ、にぃ」
「おやすみ、なさい……」
手を振る梶さん。
梶さんが交差点を曲がるまで、あたしはずっと彼の背中を見つめていた。

