「悔しかったよ。顔は似てるのに、どうしてお姉ちゃんなんだろうって。
……お姉ちゃんが死んで、あたしが隣にいられると思った。

まぁ……淡い期待だったけど」

「で、でも……今……」

「“代わり”だよ」

「……ぇ」

「あたしはお姉ちゃんの“代わり”。お姉ちゃんが死んで、そのときのなお、酷かったよ。バイトにも、大学にも行かなくて。そんで、あたしに言った言葉が、


”俺のそばにいてよ、菜摘”って」


「……ッ」

「求められて嬉しかった。あたしはずっと側にいたよ。けど、結局は“代わり”。一度も、箕原奈南として見てくれることはなかった。何度あたしの名前を呼んでくれても、抱きしめてくれても、体を重ねたって……なおの目には、あたしは映ってないの。“特別”になんて、なれっこなかった」


自然と……涙があふれた。

今ならわかる。

あの言葉の意味。


『……羨ましいよ』


『尚紀の”特別”になれるあんたが』


隣にいても、

決して“特別”になれるわけじゃない。

近くにいても、

遠く感じてしまうんだ。


今、あたしも、そう思うから。