「理由、聞いてもいいか?」
「……梶さんにはね、彼女がいたの。その彼女は……もうこの世にはいない。忘れられないんだと思う。しかもね、その彼女あたしとそっくりなんだって。重ねてたみたい」
「それなら尚更っ」
「でもね、どんなに苦しくてもやっぱりあたしは、梶さんの隣にいたい。彼女じゃなくても、特別じゃなくても。何度どん底に落とされても」
川崎くんは、目をまん丸にしてあたしを見る。
「その分、幸せになれると思うんだっ!」
「……」
「川崎くんとつき合ったら、すごいすごい幸せだと思う。毎日、笑ってられるよ。でもね、あたしは、毎日笑って幸せな恋よりも、
涙を流してでも幸せになれる恋がしたい」
ただ笑って幸せになるよりも……
苦しくて、
涙を流して、
その分、幸せになるのがいい。

