「じゃ、また明日来ます」
パパはてらおのおばあちゃんに挨拶すると、引き戸をしめて、私を車に乗せた。
車が出発する。私とママを、どんどんどんどん離してく。

バイパスにのるところのすぐ隣に、工場があった。そこが鉄工所だと知ったのは、ずっと後になってからだけど。ずいぶんと大きくて、オレンジのナトリウム灯が夜の闇の中でぎらぎらと光って、不気味だった。
この中には、訳のわからない機械の設備がたくさんあって、私のような子供が入ったら、きっと怖くて死んでしまう。
作られているのも、きっと何かよくない物にちがいない。この間の地震は、この工場のせいかもしれない。
私は、勝手にそう思い込んでいた。
私の家がある所は、とても静かで平和なのに、こんな恐ろしいものの近くに、ママを置いていくのだと思うと、思わず泣きそうになってしまった。
ぐっとこらえる。