かな子

そっと、耳にあてる。
「まりちゃん?」
ママの声だ。どうしてこんなに遠くに聞こえるんだろう。
「ママ?ママ?」
「まりちゃん?ママだよ」
ママはたしかにそう言ったのだけれど、周りが騒々しくなって、いっそう遠くに聞こえた。
その時、なにかがせきを切ったようにあふれだした。押しつぶしてきた気持ちが、音を立てて決壊したみたいに。
涙が両目からあふれ出る。
「ママ―っママ―っ!!!」
「まりちゃん?」
夢中になってママを呼んだ。でも、ママの声はどんどん遠くなる。
「ママ!ママー!!」

目から、鼻から、顔中からいろんなものがこぼれ出して、もう私の顔はぐちゃぐちゃになってしまった。

おばあちゃんに引きはなされるまで、私はずっと泣き叫んでいた。