我が家は両親がいなく、犬を飼うには大黒柱である兄の叶多君の許可がいる。
叶多君は今年で28歳。
少ない収入で私や弟の世話を見てくれる優しい自慢の兄さん――――だけど、とにかく重度の動物嫌い。
犬が欲しいと言ったら、凄い形相で睨まれてしまった。
でも、欲しい!!
「欲しいなー、欲しいなー。」
ちら、と叶多君を伺う。
叶多君は新聞に目を通していて、此方には目もくれない。
「欲しいなー、ねぇ亜樹。」
私は足元に寄ってきた2歳の可愛い弟、亜樹を抱えて膝に乗せる。
「ほし、い?」
「亜樹もワンワン欲しいよねぇ?」
「ほしいー。」
ああ、癒される………。
マシュマロみたいな頬っぺた、くりっくりのおめめ!!
「叶多君が駄目って言うんだよ?酷いよねぇ?」
「うー、にーに、ひどいー、」
「…………っ、」
お、叶多君が呻いた。
「叶多君がワンワン嫌だって。亜樹、叶多君の事嫌いになっちゃうよね?」
「あき、にーにキライ…。」
「……………亜樹…っ」
叶多君が頭を抱えてる。
よし、あと少し。