「あの、話ってなんですか?」

「ごめんね、突然で。とりあえず着いてからゆっくり話しましょう」

ゆっくりできる状況じゃないけどね、と那美は心の中で舌を出す。

満里は助手席の窓から外に目をやる。自然と、ガラスに映りこんだ自分の顔が目に入ってくる。

こんなに早くまたこの町にくるとは思わなかった。

突然かかってきた那美からの電話。

詳しいことを那美は話してくれなかったが、何かに突き動かされるように必要最小限の荷物だけをバッグに詰め込むと、明が調べてくれた直近の東京行きバスに飛び乗った。