時刻は15時ちょうど。いつもの桟橋から、タカは竿を大きく振り被る。

待機しているのは奈津。珍しく一番手を買って出た。

いつも一番手の役割である梅男も何も言わずに譲り、奈津の後ろ、2番手に待機している。ついでに3番手には富田。

川の北側、外房マリンの桟橋には紺と晴がしっかりと待機している。

心地良い風切り音とともに、白金色の糸が川の真ん中へと伸びていく。

「準備はいいか」

「うん」

タカの問いに、奈津が短く応える。

「頼んだぞ」

タカは続けて、川べりに吹く風にかき消されてしまうくらい小さな声で言った。

奈津は今度は応えなかった。その代わりに、心の中でしっかりと受け止める。

巨大魚の当たりはすぐに来た。これまでとは違って、タカも、奈津も、この場にいる全員は落ち着いて構える。

奈津は、ぐんぐん糸の伸びて行く竿を渡されると、それを強く握り締める。リールに力を込め、糸の動きを徐々に止めていく。

巨大魚にひっぱられ、体が前に進み出す。