カブトムシを埋める

やっちゃんの家に場所を移しても、やることは同じで、相変わらずみんなはゲームの前に群がって座っていた。
スマッシュブラザーズ。ピンクの丸い奴とか、帽子かぶった小柄な人間とか、みんな戦ってる。ジャンプして、攻撃して、あっけなく落ちていく。
でも、また生き返る。
なんでみんなこんなに上手なんだろう。私も、これが出来たらもっと楽しいんだろうな。そしたら私は、栗山さんみたいな、ゲームが上手で、長い髪がきれいで、やっちゃんに告白されるような女の子になってたかな。




気がつくと、窓の外はすっかり夕方になっていた。おじいちゃんがやっちゃんの部屋まで上がってきて、「みんなもう遅いから帰んな」と促した。
みんなは素直に、「じゃあそろそろ」とか、「俺今日そろばんあるから」とか言いながら、立ちあがったり、ゲームを片づけたりしていた。
やっちゃんはみんなを送っていくついでにカブトムシを埋めてくる、とママに告げて、黄色い網がついた、中くらいのプラスチックのむしかごを自転車に乗せた。
黒いカブトムシがたしかに中にいる。動かない。