カブトムシを埋める

スマブラはしばらく続いたけれど、さすがにみんな飽きてしまって、やっちゃんの家にみんなで行こう、ということになった。
坂田の家の前に、群がるように止めてある子供用の自転車。みんな、それぞれの自転車にまたがって、日のかげった中、やっちゃんの家に向かう。

変速機を一番重くして走る男子たちに、私は必死でついていった。栗山さんも速い。栗山さんは女の子なのに、まるで男の子が乗るみたいな
自転車に乗っている。後で聞いたら、お兄ちゃんのお古らしいけれど、隣の家のお姉さんからもらったオンボロよりはましだと思う。


やっちゃんの家はとても大きい。リビングも大きいし、やっちゃんにはちゃんとやっちゃんだけの部屋があって、ベッドもある。
リビングにはやっちゃんのママとおじいちゃんがいて、おじいちゃんは「もう四時半だからあんまり長くいるとうちの人が心配するぞ」と忠告すると、湯のみを持って奥の部屋に引っ込んでいった。
私たちはリビングを出て二階に上がる。
「やすし!カブトムシいつになったら埋めにいくの?」「ちゃんと行くよ」
やっちゃんとママの会話が、後ろで聞こえた。


カブトムシ、飼ってたんだ。死んだんだ。知らなかったけど。