君に伝える。



麻子が言っていた場所に行く。

「彩菜!来てくれたんだ!」
「アンタが来いって言ったんでしょ?」
「相変わらず、冷たいな」
「謝罪の言葉は?」
「あぁ、ゴメンゴメン」
「そんな軽いので済むと思ってんの?」

本気じゃなかったの。
謝りたいって言葉は、ウソだったの。

最低。

ゆっくりと遊喜が近づく。

「じゃあ、これで許してもらえる?」

土下座でもするのかと思えば。

遊喜の顔が近づいてきて、
考えるヒマもないまま
彩菜の唇に自分の唇を押し付けた。

「…!な、何すんのよっ!!」

無我夢中で遊喜を突き放す。

フラついたところにアッパー、
そして立て続けにストレートとカウンター。

ボロボロになった遊喜を見下し、
トドメの一言。

「一回、死ねば?」



振り返らずに走る。

ゴシゴシと唇を拭うけど、残ってる。
遊喜の何かが、残ってる。

彩菜の心に、黒いモヤがうずまいてる。

嫌だ、嫌だ、嫌だ!!
このまま将器に会いたくない、会えない。
なんでこんなことに…なっちゃったの?