あなただけを愛したい

「……」


「……」



にらみ合いながら、一抹の変化をも逃さないようにと、テルの表情をうかがう。




「あ…」



突然、テルの表情が緩み、声が漏れたと思ったら……



「今日はもう帰ってくれ」


「あ?逃げんの?」


「ちげぇよ。俺、これから仕事なんだよ」



工事現場で働いているテルは、昼夜関係なしに仕事が入る。


……仕事なら仕方ねぇけど。



「テル、俺さ、……大切にしたい女がいるんだ。だから、……おまえの気持ちの整理がついたら、知ってることを話してくれよな」



きっと、テルは話してくれる……そう信じてる。


なんだかんだ言っても、俺らは親友だからな。



「航……」



テルはなにか言いたげに口を開くけれど、あとが続かない。



「つっても、俺、気はみじけぇし、長くは待てねぇよ?」



と、少し嫌みっぽさを残しながら言うと



「はは、航には敵わねぇや。……またゆっくり話そうぜ」



柔らかい表情に戻ったテルに、何となく安心感を覚えた。