あなただけを愛したい

それからはお互いに何も話さず、ただ波の音を聴いていたけれど……


やっぱり、気になる。


ほんとに、あたしの元へ戻ってきてくれたのか、ちゃんと聞きたい。



「航」


「ん?」



髪をすく手は止めずに、あたしの顔を覗き込んで、視線を合わせた。



「えっと、……茜さんと、子供は?」



ちゃんと聞きたいと思っていたのに、いざ聞くと航の口から出る答えが怖くて、視線をそらしてしまった。


そんなあたしに、航はやさしく声をかけてくる。



「柑那、こっち見て」



聞くのが、怖いっ。



「柑那」



航の大きな両手が、あたしの両頬を挟んで無理矢理視線を合わせた。



「柑那、ちゃんと聞いて」



周りは暗いけれど、航の表情は見える。


凄く真剣な表情。


それを前にすると、あたしの胸がドクドクと音をたて始めた。