しばらく沈黙が続いたあと、竜一が静かに口を開いた。
「俺はさ、柑那がどんだけアイツのことを好きかわかってるつもりだし、今はそれを邪魔するつもりはねぇよ。ただ――」
竜一はそう言ったきり、また口を閉ざしてしまった。
視線だけを竜一の方へ移す。
ハンドルに腕を置き、重ねられた両手の上に顎を乗せて、まっすぐ前を向いている竜一。
何を考えているんだろう。
“ただ”のあとに続く言葉は何?
聞いてみたいような、聞きたくないような。
「誕生日を空けておきたいのは、……アイツと何かあるかもしれねーって思ってるからだろ?」
……図星だった。
「もし、……誕生日に何もなかったら、柑那は、諦められんの?」
何も……
でもそれ以前に、ちゃんと約束してるわけじゃないし、あたしの誕生日だって話の流れで、チラッと口にしただけ。
覚えてるって保証もない。
だけど……
「…――諦めないもん」


