もし来たら……


決心した心が折れちゃうかもしれない。


その胸に飛び込んじゃうかもしれない。



その前に……



「早くっ――」



やっちゃんは、無言のまま車を発進させた。


やっちゃんのアパートへ向かっている間、ずっと窓の外を見ながら涙を流し続けた。


やっちゃんは、あたしの様子を見れば別れたってことをわかっていそうなのに、そのことには全く触れてこない。


ていうか、言葉一つ発さない。


もう少しでアパートに着くって頃、ようやくやっちゃんが口を開いた。



「柑那、後悔しないのか?」


「えっ」



後悔?


それって、航と別れたことに対してだよね?



「後悔も何も……、こうするしか、選択肢がないと思ったんだもん」



子供には罪はないんだから。