「今まで、ありがとう。あたし、航といられて幸せだった」



そう言って、精一杯の笑顔を作った。


そして……



「航、バイバイ」



そのまま、アパートのドアを開けて、外へ出た。


航があたしの名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返らずにそのまま走った。



「…ふ……くっ…」



走りながら、涙がどんどん頬を濡らしていく。


視界も滲んで、前がちゃんと見えない。


何度も何度も涙をぬぐいながら、やっちゃんの車まで走って、そのまま乗り込んだ。



「柑那?」


「出してっ――」


「は?」



やっちゃんが眉間に皺を寄せる。



「車を出して」



航が追いかけてくるかもしれない。