あなただけを愛したい

航のこの声に、我に返ったのか、“はぁー”と息を吐いてから、今度はあたしの方へ体を向けた。



「土原さんは?何であたしには何も言わなかったの?」



さっきより、遥かに冷静な声。



「あたしは……」



こうなってしまった以上、ほんとのことをすべて話さなきゃって……


そうじゃなきゃ、三上さんをもっと傷つけちゃうと思ったから。



「届かないって思ってたから」


「届かない?」


「うん、あたしね、先生とは何の接点もなかったんだ。授業を受け持たれたこともない」



航の前で話すのは凄く恥ずかしいけれど、今はそんなことを構ってられない。



「ずっと……“おはようございます”と“さようなら”の挨拶だけだった。……自分から積極的に……ってできなかった」