マサ兄ぃはあたしが簡単に東京に染まるような人間じゃないって信じてくれてるんだと思うと、なんだかあたしは嬉しくなった。

「だって、弥生ちゃん、さっき“あたしの雪ダルマ壊したら弁償や”って、俺に向かって真面目な顔して言うとですよ」

「雪ダルマ…?」

父さんがやっと口を開いた。

「こないだ雪が降ったとき、弥生ちゃんが小さな雪ダルマを作ったとです。ソレを俺ンちの冷蔵庫の中に入れてあって“今度あたしが帰ってくるまでゼッタイ壊したらダメやけんね”とか言うとですよ」

「フッ。弥生がそげなことを」

その日はじめて父さんが笑った。

「弥生ちゃんはまだまだ子どもやけん、お父さんが心配するような悪かことなんてできる子じゃなかとですよ」

「もぉ、マサ兄ぃ!」

さっきはあたしの人間性を信じてくれてるのかと思って喜んだのに、結局あたしのことを子ども扱いしてるだけじゃん。

あたしはもう子どもじゃないよ。

アノ飛行機に乗って東京に行けば、おしゃれでオトナな東京の女子大生なんだからね。

バイバイ、博多の街♪ そして、お子ちゃま時代の春日弥生にもバイバイ♪♪