だって、あたしはマサ兄ぃのことを“アニキ”としてではなく、一人の“異性”として実はずっと好きだったんだと思うから……。

ずっといっしょだったのに、博多にいたときに気づかなかったのは、その想いがまだ“恋”とは意識できないような小っちゃな小っちゃな……そして幼ない“恋愛未満のキモチ”でしかなかったからだと思う。


でも東京に来て気がついた。

マサ兄ぃがいない世界に来たことで、はじめてあたしは気がついた。

“あなたがいない……”

そんな場所にはいられないことに。


そしてそのとき心に決めた、

“短大を卒業したら博多に帰ろう”って。

それまでは遠距離恋愛だけどガマン、ガマン。


「じゃあ、待っとぉけん、山笠のときに帰ってきちゃりぃ」

「ぜ…ゼッタイ帰るっ……帰るけん…マサ兄ぃ……空港まで迎えに来てな……」

「声が震えよるけど、泣きよるんか?」

「全然っ…電波の状態が悪かだけとよっ…」

あたしは思いっきり強がって言うと、いつまでも止まらない涙をゲンコツで拭った―――