「気持ちはうれしいんだけど、菜々美はリレーの前の障害物走に出るでしょ?
続けて出るのは、ダメなんだ」
体育祭実行委員の子が、申し訳なさそうに言う。
「あ、そうなの?」
菜々美は残念そうに手を下した。
すると、またみんなの視線があたしに。
うわぁ、困ったな……。
みんなの顔を黙って見返していると、ひとりが前に進み出てきた。
真喜子と一緒に衣装係をしてた子だ。
「あのさ、綾華、走るの遅くてもいいから、出てみない?
あたしね、真喜子から、聞いたの。
真喜子が、ひびきからいじめられてたとき、綾華が助けてあげたこと。
あたし、綾華なら、もし負けても、責めたりしないし、悔いもない。
ひびきが走るより、綾華の方がいいよ!」
「えっ……」


