あたしたちのクラスの応援席の周りだけ、3度くらい気温が下がったみたい。
フリーズした空気を破ったのは、ひびきだった。
「ふ、ふざけたこと言ってんじゃないわよ!
なによ、どいつもこいつも綾華綾華って!
フン、バカらしいっ! あたし帰るっ!」
ひびきは、あたりの椅子を蹴散らして、本当に帰ってしまった。
さすがに、取り巻きの子たちも、呆然とするばかり。
だれも、ひびきを追いはしなかった。
そのとき、体育祭実行委員の子がつぶやいた。
「ひびき、リレーに出るはずだったんだけど……、どうしよう」
――ザワッ。
クラスメートたちが、お互いに顔を見合わせる。


