急いで自転車を置いて、智哉のもとに走っていくと。


「ちょっとこっち来て」


智哉はあたしの腕をつかみ、ひと気のない、特別教室棟の裏に引っ張っていく。


「えっ、なに?」


ま、まさか……、おはようのキス、とか?


いやいやいや、それはないよねっ!


自分で自分に突っ込みつつ、にやけそうな顔を引きしめて、ついて行くと。


「雄太のことなんだけど」


「え、あぁ……、うん」


まったく色気のない話に、ちょっとがっかり。


あー、いや、べつにあたし、期待してたわけじゃないからねっ!