でも、智哉は、真剣そのものの表情。
「いや、徳井さんが望んでるのは、金を取り返すことだ。
とりあえず今は、金の受け渡しをこっそり撮影して、あとで、それをネタに雄太を脅して、金を取り戻す。
それがうまくいかなきゃ、警察にビデオ見せて、捕まえてもらうしかないけどな」
「そ、そっか……」
また通りの方を向いた智哉に、ほっとする。
あー、びっくりした。
智哉、いくら声をひそめてるからって、そんなに顔近づけないでよ。
心臓に悪いよ……。
智哉の背中に、そう心の中で毒づく。
でも、後ろからなら、いくらでも、智哉を見つめることができる。
こっそり、ななめ後ろから盗み見ると、街灯の明りがメガネに反射して、鈍く光った。


