「菜々美ー、昼練、行こー!」
教室のドアの外から、大声で菜々美を呼ぶ声が響いた。
他のクラスのバスケ部の子たちだ。
「あ、今、行くー!」
菜々美は、大急ぎでお弁当箱をカバンにしまうと、
「じゃ、ちょっと行ってくるね!」
言うが早いか、席を立った。
オリエンテーリングのときのねんざが治ってから、菜々美はバスケ部の練習に出るようになったんだけど、
聞いた話だと、1年で唯一の、レギュラー候補らしい。
さっき、真喜子の話のときに、特技がないなんて言ってたけど、謙遜もいいとこ。
菜々美の中学は、バスケの全国大会の常連校で、菜々美はキャプテンだったっていうんだから。


