「おふくろは今、病気療養中で、田舎に帰ってるんだ。
うちは、元から親父はいなくて……。
それで、遼ちゃんがここに引っ越してきたんだ」
「あぁ、そうなんだ……」
遼子さんは黙々と食事を続けてる。
こういう事情があったから、さっき遼子さん、『智哉に聞いて』って言ったんだね……。
智哉が下を向いて食事を再開させると、その向こうのリビングが目に入った。
と、ふと、リビングボードの上に載っている、仏壇に目がとまる。
うちには仏壇ってないから、珍しかったっていうのもあるけど、
智哉、お父さんが元からいないって……。
ひょっとして、早くに亡くなってる、とか?
でも、そんなこと、簡単には聞けないよね。
あたしは、ふたたびテーブルに目を戻し、食事に専念することにした。


