「徳井さんは悪くないわよ!
だます方が悪いの!」
うん、それはあたしもそう思う。
「それで、警察には届けたんですか?」
智哉が聞くと。
「ううん、息子に叱られるから……」
徳井さんは、消え入りそうな声で、そうつぶやいた。
矢崎さんは、そんな徳井さんを、やるせなさそうに見つめ、あたしたちに言う。
「おととい、この人の息子さんのフリして電話してきてね、
電車でチカンしちゃって、奥さんに内緒で示談金を用意しなきゃならないって、言ってきたんですって」
「チカン、ですか……」
「そうなのよ。
そんなこと言われたら、親としては動転しちゃうじゃない?
あわてて、金額聞いて、すぐに用意するって言ったらしいのよ」
「それで?」


