朝がやってきた。

その日光のように哲平の心は晴れていなかったが、母親にうるさく言われて、やむなく目を覚ますことになった。

学校なんて行きたくない。

思い出すだけだ。

あの時の蛍の苦しそうな声、やるせない表情・・・届かない力に、冷たい手。

ちゃんと、私の分も生きて・・・ね。

哲平は大げさに首を振る。

「てっちゃん、真岡のこと聞いたよ。元気だせ」

教室ではみんな心配してくれる。
しかしその気遣いが、少し疎ましい。

「俺のせいなんだ・・・。俺が、守れなかったんだ・・・」

蛍は、もういない。

机に突っ伏せる。

やがて朝礼のチャイムが鳴った。日直の号令に合わせ、面倒臭そうに立つ。

おばさん担任が教室に入り、それについてきたのは、阿久だった。
哲平は椅子を倒して後ずさりした。

「お、お前、お前まだいるのか!」

担任はきょとんとしているし、クラスメイトにしても動揺する哲平をなだめようとしていた。

「なに言ってるんだ、佐々木」

「こいつは悪魔だぞ!」