そんなことを考えていると悠月がひょいっと顔を出す。

「哲平くん、それあんまり人に見せちゃダメだよー」

「分かってるよ」

返事を聞くと、悠月はまた陸と並んで行ってしまった。お礼に購買でメロンパンを、なんて言っていたが。

「なんかいい雰囲気だったね、姫とられちゃうぜ?」

健介がからかうように笑う。

「それはそれでいいな。あいつも多少色気が出んだろ」

「柿崎っていつもひとりでいるし、ちょっとびっくりした。僕でも話しかけづらいのに、姫って本当人なつっこいのな」

「あいつはそれしか得意がねえからな」

誰にでも分け隔てなく優しい悠月。

でも、これは俺だけ特別だと言っていた。

ぎゅっと袋を握る。

「それ?」

「ああ、これな、悠月にもらったんだ」

中学3年の夏だった。

悠月はチアリーディングの練習中、大技に失敗して、危篤になるほどの怪我を負ったことがあった。

偶然同じ体育館で部活をしていた哲平も病院に付き添った。