「だからこうやって送ってやってるんだろ」

「ん、ありがとうね」

悠月は首をかしげて微笑んだ。

部活が終わる時間もそんなに変わらないし、昔からの習慣というか流れで一緒に帰っている。実際、正義感の強い哲平が放っておくわけもないが。

「お前みたいな危なっかしいの、ひとりにできないしな」

哲平がくくっと笑うと

「そんなことないよー。あたしだってやるときはやるんだよ! 見てて」

悠月はブランコの上に立って全開で漕ぎ始める。

やがて揺れが最大になると、板を蹴って鮮やかに飛び立った。綺麗な放物線を描いて、おまけに途中で一回転なんかして見事着地。口をあんぐりさせる哲平に向けて、ポーズを決めた。

いや、チアリーディングを得意とする彼女なら朝飯前かもしれないが、いきなりで驚いた。

「すごいでしょ? これなら悪いやつらと戦えちゃいそうな気もしない?」

哲平は思わず吹き出した。

「ばーか。そんな簡単に」

「いえ、素晴らしいですねお嬢さん」

後ろから声がした。

振り返ってみると、背中に黒い羽がある、なんだか変な格好の人がいた。頭に角も生えてるし、まるで漫画かゲームの悪役みたいだ。