勿忘草



「もうすぐ夜になる。こんな所で寝ていたら死ぬよ」

話しかけてきたのは見知らぬ少女だった。顔立ち、身長、声と目の色はどう見てもあいつのものなのだがどうも髪が違う。あいつは明るい金髪の男だが、目の前にいるのは鎖骨くらいまである黒髪の女だ。

何よりも気になることがある。

「どうして俺の名前を知っているんだ?」

「こんなに大切なものを落としていいの?騎士さん?」

彼女は俺の問いかけにふっと笑いながら答えて、何かをこっちに投げてきた。

思わずキャッチしてしまったが、中身はどうでもいいものだった。王国騎士団の証である金色の小さなバッジは今の俺には関係ない。

「もしかして、これを見て俺の名前がわかったの?」

少し苛々とした聞き方になってしまったが、彼女はこっちを馬鹿にしているような言い方で返す。

「一つ一つにちゃんと名前が入っているんだ。こんなに大切なものを落とすなんて騎士失格ね」

「こんなものいらないさ。俺はもう騎士じゃない」

バッジを投げ捨てて睨み付けても彼女は臆することはない。