実際、先ほど三番地には訪れたばかりだが、あまり長居したいと思える場所ではなかった。二番地は、女子供や老人、俺やガイのような二十代、三十代の若い男性といった、幅広い年代の人間が集まっている。だが、三番地は浮ついた若い男性が中心として生活しているためか、二番地のテント周りよりも雑然としていて、言葉を悪くすれば汚い。食事をするのも、用を足すのも、それぞれが自由にやりたい放題といった感じだ。自分らの区画以外の人間を見つけると、へらへらとした笑いを浮かべ、他人を小ばかにするような態度も好きではなかった。
「あいつらが規則なんて守るわけない。徒歩で十番地に行くのも無理があるしな……夜中にでも忍び込むさ」
「おいおい、見つかったらヤバいぞ」
「そもそも『水や食料は誰のものでもなく、足りない場所に率先して差し出しましょう』だろ?」
「そりゃあ、そうだけどさ……あいつらはそんなことお構いなしだろ」
「だから勝手に貰ってくんだよ」
誰が最初に言い出したのかは知らない。お金もない現在、水が多ければなくて苦労している者たちへと手を差し伸べ、かわりに食糧や物資と交換する。そんな決まりが、いつの間にか伝播されていたのだ。
「でもまあ、バイクがなくなれば十番地に行くのも厳しくなるしな……」
「そういうこと」
ガイの心配そうな声が、防塵マスクの奥で震えるように響いた。俺はなんだか、やっぱり苛々した気持ちは治まらず、ガイの視線から逃げるようにテントの中に入っていった。



