「相変わらずなにもない。ただ三番地のやつらが、池を見つけたらしい。話していたのを聞いた」
防塵マスクの奥から、くぐもった声で言う。
すると、俺の言葉を聞いた男が「マジか!」と興奮したように声を上げて、ガラクタの山からこちらに走り寄ってくる。自分と同じような防塵マスクを装着しているせいで、表情は窺えないが、目をきらきらさせて喜んでいる様子が手に取るように想像できた。
遠く離れた場所ではわからないが、この辺りでは、テントごとに番号をつけて呼んでいる。ひとつのテントには、大人が二十人ほど生活できる広さがあり、俺も目の前の男――ガイも、二番地と呼ばれるテントで生活していた。
「それ、マジか! ここから十番地に行くの大変だったもんなー。バイクのガソリンも残りわずかだろ? 三番地なら歩いてすぐだし楽になるな!」
ガイは終始興奮したまま、俺の肩を何度も叩いて喜びを表した。ガイの高く通る声がテントの中にまで響いていたのか、二番地に住むおばちゃんや子供が何事かと顔を覗かせた。ガイはようやく俺から離れると、「池が三番地に見つかった!」と嬉しそうに話しかけている。話を聞くおばちゃんらも、時おり嬉しそうに「まぁ」だとか「よかったねえ」などの声が俺の耳にも聞こえてきた。だが、その声を聞いて、俺は内心舌打ちをしていた。



