けれど、俺が彼女と一緒に過ごしていて気づいたことがある。
安心感。ほっとするひととき。あの安堵が、欲しかったのだ。
生きていく中で、生きるために必要なのは、水でも食糧でも場所でもない。俺の場合は、ユリが与えてくれた安心感の中にあったのだ。
家族と暮らしていたときは、当たり前のようにそれがあった。次の日も、家に帰ってこればこの笑顔があると信じて疑わなかった日々。母や父の顔を見るだけで、一日の疲れが吹き飛んだ気がした。明日の出来事を想像して、ため息がでる日もあった。しかし、帰る家がある安心、迎えてくれる家族がいる安心。それらが俺を生かしてくれていた。苦しいことよりもずっと大きな存在だったのだ。
ユリの傍は、なぜかはわからないが、その安心感があった。
それが災厄が起きてから、次の日が怖くて仕方なかったのだ。もしかしたら次の日自分はいないかもしれない。もっと最悪な状況になっているかもしれない。行方知れずになっている家族の死を知ってしまうかもしれない。そうして、知らず知らず死を望むようになっていった。自害する勇気もないのに、ただ生きたくないという思いだけが自分の中に沈んで、いつも不安の中に身を置いていた。ユリの傍らにいる自分は、それらの不安を全て忘れさせてくれたのだ。



